こんにちは。あなたの心の幼なじみ、愛奈でございます。
春は出会いの季節であります。夜、寝ようとしているところにベッドに入り込んできて、背中に抱きつきながら『お兄ちゃん……あたし、もう子供じゃないよ……』と言ってくれる血の繋がらない妹と出会いたい皆様、いかがお過ごしでしょうか。
これは妹に邪な感情を抱いているとかそういう低俗な話ではなくて、人が星空や夕焼けや草花を美しいと思うのと一緒です。大好きなお兄ちゃんを想って小さな頬を朱に染める妹は大自然の造形美だから問題ありません。人間なら誰しも紅く燃える夕日や風に舞い散る桜の花びらや、日頃はツンツンしている妹が時折見せるデレの表情に心を奪われて当然だからです。
従って、この世のあらゆるものは二種類に分けられます。すなわち妹と、妹以外の何か、というわけです。
そんな話はどうでもいいです。
昨日、テーブルの角に足の小指をドカンとぶつけて水揚げされたマグロみたいにビクンビクンしていたところ、高校生の従姉妹から一通のメールが届きました。
【件名】日曜日に~
【本文】彼氏とデートするんだけどさ、どこ行けば喜んでくれると思う? あれ、そういえば愛奈ちゃんって彼氏いたっけ?
思わず笑ってしまいました。人間が完全なる敗北を味わった時、溢れるのは涙ではなく、笑みだからです。あまりのやるせなさに多分スフィンクスみたいな顔してたと思います。
そもそも以前から私は考えていました。黒ヤギさんが白ヤギさんからの手紙を食べたのは、お腹が減っていたからではなく、書かれていた内容についカッとなってやったのではないかと。手紙を食べておきながら謝罪の一つもなく、あまつさえ『さっきの手紙のご用事なぁに?』と若干バカにした感じで聞き返したのは、もう一度言ってみろという宣戦布告なのだと。
……まあいいです。言葉にできない悲しみは一人で乗り越えていくしかないって翠星石も言ってましたし。HUNTER×HUNTERも長期連休載とかいってて目からウォシュレットが出そうです。
そういえば彼女は先月のバレンタインで告白に成功し、見事に恋人をゲットしたという恐るべきスーパーリア充でした。なんということでしょう。モンハンでレア素材をゲットして飛行石を手に入れた時のムスカみたいなテンションで喜んでた私のバレンタインとは正反対のベクトルじゃないですか。
すみません、話がそれました。
自分で言うのもおこがましいのですが、こう見えて私はデートのプロです。今までも幼なじみ、帰国子女、お姫様、宇宙人、メイドロボ、タマ姉から詩織ちゃんまで、数え切れない女の子とデートを重ね、そして永遠を誓ってきました。ついさっきも空から降ってきた美少女とプールに行ってきたところであります。
しかしながら、リアル高校生にアドバイスするとなると話は別です。まったくの見ず知らずの他人なら、『リア充とのデートなんて好きな漫画はワンピース、好きなゲームはモンハンですって言っておけばいいよ。ついでに趣味はケータイ小説を読むこととスノボって設定にしておけば、あとは相手が勝手にジャパネットの社長みたいに盛り上がってくれるから』と適当なことも言えるのですが、相談者が従姉妹だとそうもいきません。もし私が同じ質問をしてこんな回答が返ってきたら、何らかの挑戦状と解釈します。
これが仮にデートの相手が義理の妹とかなら、
世界的大ヒット! 全米が泣いたラブロマンス大作映画を鑑賞
↓
オシャレなオープンカフェで創作スイーツに舌鼓
↓
高級ブティックが並ぶショッピングモールでウインドウショッピング
↓
そろそろお腹すいたね?
↓
なんと! あの有名レストランを予約してました!
↓
『大切な家族へ』と書かれたプレートの乗った特大ケーキが登場
↓
今日は二人が家族になった記念日だよ忘れてたろ?
↓
お兄ちゃん好きっ
という今までギャルゲーで学んできた知識を総動員した完璧な作戦も立てられます。こうなればこっちのもんです。あとは何もしなくても、
という展開になるに決まってます。ひとつ卑猥なラブコメ展開、ふたつ不埒なお兄ちゃん、みっつ見えてるおぱんつが、ってなもんですよ。純愛です。感動です。映画化決定です。
いや……ちょっと待って下さい。考えてみれば、別に無理してデートスポットを模索しなくても、高校生ならではの場所があるじゃないですか。
それは『学校』です。古今東西、多くのラブコメ漫画が学園モノであったように、学校という場所には様々な青春要素があります。
屋上で幼なじみの手作りお弁当を食べ、クラスメイトと体育倉庫に閉じ込められる。保健室の先生に誘惑され、下校時には後輩と茜色に染まる坂を歩き、卒業式に伝説の樹で告白する。性の浪漫飛行です。
特に放課後の教室は、群を抜く魅惑の空間だと言えましょう。そこでは『好きです……キスして』なんていう告白が行われていたり、運動部の女の子が汗を染み込ませたブルマをそっと鞄の中にしまっていたり、時には『ここが先輩の教室なんですね。同じ教室なのになんだか特別な気がします。そういえば二人っきりですね、ドア閉めちゃいましょうか、えへ』みたいな放課後ランデブーが繰り広げられているのです。リア充とは、清く正しくあるべき聖なる学舎で清くなく正しくない行為をする性なる輩なのです。
ようやく答えに辿り着きました。学校こそ高校生である二人がデートするにピッタリの場所じゃないですか。灯台もと暗しとはこのことです。『青い鳥』という童話でも、チルチルとミチルの兄妹が青い鳥を探して世界中を旅しますが、結局最後に自分の家の鳥かごの中に青い鳥を見つけました。探していた答えは意外と近くにあるということなのでしょう。『犯人はヤス』みたいなもんです。
本当はもう一つか二つくらいプランを考えたいところではありますが、二兎を追うものは一兎をも得ずといいます。近所のラーメン屋も『カレー始めました』という看板を出した三週間後に潰れましたし、ギャルゲーでもどのヒロインを攻略しようか迷って八方美人に行動しているうちに共通ルート終了で時間切れ、好感度不足でバッドエンドというのはよくある話です。というか私がさっき体験した話です。納得できません。一緒にプールにも行ったのに。
もういいです。悲しくなってきました。愛ゆえに人は苦しむとサウザーも言ってましたが、まさにその通りです。
そもそも清々しいほど驚きの白さで非リア充である私の意見を参考にデートに臨むなんてのは、全裸でエベレストに登ろうとするくらい危機感のない話です。もしそんな格好でエベレストに挑戦してる人がいたら、何らかの形でギネスブックに載りますよ。
そんなわけで、悔しいから従姉妹にはこのまま返信します。
【件名】Re:日曜日に~
【本文】学校
ミッション完了であります。
これが私の全力全開です。というか、これ以上慣れないことを考えると脳が過負荷に耐えられず爆発し、精神がソウルな世界に旅立って卍解してしまう可能性もあります。
一仕事終えたところで、もう一度プールに行ってきます。さっきデートに失敗したのは、うっかり着替え中に踏み込んでおぱんつを拝見してしまったからなのでしょう。そりゃ怒りますよね。マザーテレサでもブチギレするレベルです。
次こそはそんな過ちは犯しません。昔の人は言いました。諦めたらそこで試合終了だと。人間は努力、根性、熱血、閃き、必中さえあれば、どんな壁だって乗り越えられるんです。
最後に私事で恐縮ですが、昨日、おかげさまで誕生日を迎えさせていただきました。3歳になりました。幼女です。
こうして今年も無事に幼女歴を更新することができるのも、ひとえに全国のお兄ちゃんのおかげであります。ありがとうございます。大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになります。
サイクルツイスターの野望
国とエアカウンター
地方のプチアイビス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E8%BB%A2%E8%BB%8A
0 件のコメント:
コメントを投稿